妖魅変成夜話第四巻「濬機玉衡」より・・桃の前の武帝
笛吹市一宮・・まるきたはなもも園・・
桃源郷への誘い
日本での有数な桃の産地、山梨県の笛吹市。
山梨県の甲府盆地は、春になると、桃農家の桃の花が 一斉に咲いて、
桃色の絨毯が敷き詰められたように、一面に桃色の風景が広がります。
黄昏時に甲府盆地を見下ろす山の斜面に立つと、
刻々と変わる夕暮れの紫色と、
桃色が入り乱れ・・溶け合わさって・・
時を忘れて眺めてしまいます。
!
・・・・・・・・・・・
ここに見える桃色のほとんどは、夏になるとお目見えする"食べられる桃"たちですが、
甲府盆地の東のエリアを流れる笛吹川に合流する・・日川・・の側に
"食べられる実の生らない桃"・・・花を鑑賞するための桃・・
"花桃" を500本も育てている「花咲かジジイ」・・こと
有賀皓一さんの「まるきたはなもも園」があります。
・・
中国から有賀さんが連れてきた「雲龍」3月23日頃
天に向かって渦巻きながら伸びた枝に花がびっしり咲きます。
ご主人の有賀さんの命名だそうです。
周囲の桃農家さんたちからは、せっかくの日当たりの良い広大な畑で、
"食べられない桃"を育てるなんて、「非・生産的 」ですよ!
「まるきた」さん、酔狂ですね・・。
なんて言われながらも、明治時代以降、絶滅の危機に瀕した
花桃たちを国が保存し、さらに桃園の主人、有賀さんが里親となって、
花桃たちを守り、愛し続けて数十年。
花の開花の時期、桃園を解放してくださるので、
貴重な古代種の桃たち、有賀さんが中国から連れてきた桃「雲龍」など、
珍しい花桃たちに囲まれて、桃園を堪能することができます。
観賞用の花桃ばかりの中、とても希少な、"実の生る桃"も育てられています。
三千年の歴史を持つ「三千実(みちみ)の桃」こと、西王母が持ち、
漢の武帝が西王母に会ったとき、七つの実のうち三つをもらったという
伝説の古代種の桃・・「蟠桃桃(ばんとうもも)」。
また、古代種の「十三夜桃」等もです。
古代中国の神話の中で、西王母の聖誕祭「蟠桃会」で
神々や仙人たちに供される
不老長寿の桃で知られる蟠桃桃・・・
雄勝の葉山神社や、
令和元年のワークショップの時の石神井氷川神社に。
十三夜桃は、京都晴明神社、籠神社に・・。
有賀さんの育てられた桃たちがご奉納されました。
桃源郷の中へ
「まるきたはなもも園」の周りは当然ながらみんな桃畑。
"食べられる桃" の花も満開です。
そんな桃畑の中を縫って桃畑の主人、
有賀さんが桃たちの話を聞かせてくれます。
自称「花咲かジジイ」とおっしゃるけれど、
爺・・というよりは・・
桃のことを何でも知っている、桃の守り手、
はなももたちの大事なお父さんです。
花桃の特徴、古代種の桃たち、花の時期、育て方、
珍しい桃を中国から連れてきた時の苦労談など、
楽しいお話を聞かせてくれながら、
広大な園内を案内してくださいます。
花桃が咲く3月の後半から4月下旬にかけて・・。
この時が、一年のうちでも最高に美しい時・・。
それ以外の日は、有賀さんにとっては
毎日が、花桃たちが翌年 美しい花を咲かせるための、
お世話の日々。
一日3本しか、剪定できない・・。という有賀さん。
3本が精一杯だなあ。。と・・。
桃たちがどうのように枝葉を伸ばせば太陽の光をいっぱい受け取れるか・・。
自然と一体になって一本一本の桃の木に挟みを入れられるので、
咲き誇った桃の木は、一本一本がドラマティック。
ちょっと見る角度を変えるだけでまた違う美しさが展開するので、
なかなか一本の桃から、次の桃に目を移すのが難しいくらい、
精緻に剪定されています。
もちろん、500本もの花桃が咲いていたら、
そこは桃源郷のようなのですが・・。
桃の木一本一本も、桃の花でできた壮大な山脈を眺めるようなのです。
ふと、目を上げれば、実際に甲府を囲む山々が目の前に広がるわけですから、
ほうっ、とため息が出てきます。
「雲龍」は、4月には花は終わってしまいますが、他の桃たちは満開に。
大地にうねる、「雲龍」の影。美しいですね。
天に向かう姿は実に圧巻です。
今年のような時にこそ、
病魔を撃退させ、不老長寿の妙薬と言われる桃たちの力。
発揮してもらえるよう、桃たちに会いに行って、
何千年もの年月を今日まで残り続けた
古代種の桃たちの奇跡、
悠然とした花桃たちの美しさ、溢れるエネルギーに
触れて、心身を優しくパワーアップ
できたらいいなあと思うのです。
入園料 500円。 有賀さんの解説付き。
はなももたちに会いに行きたくなったら、
開園しているか、どうぞ問い合わせてください!